序:キリストの愛の形
・ピレモンへの手紙は、パウロがピレモンという信徒に対して書いた手紙。
・パウロはキリストの愛の形をこの手紙を通して豊かに書き表している。
1:ピレモンとオネシモ
・パウロが本書を記したのは、ピレモンの家から逃亡した奴隷オネシモを、ピレモンのもとに戻すため。
・聖書時代の奴隷は、近代に起こっている人種差別的なものとは異なる。
聖書時代は社会的地位に関わる問題で、生活困難者の救済としての奴隷制度の側面があった。
(奴隷を守る種々の規定があった。→申命15:12-13, コロサイ4:1奴隷に対して正義と公平を示しなさい)
・ピレモンはコロサイの町に住む信者で、オネシモを引き取り奴隷とした。→1:1-2
・1節「愛する同労者」・・・ ピレモンはパウロたちと福音宣教のビジョンを共有していた。
・2節「あなたの家にある教会」・・・ ピレモンは家を教会の礼拝や集会のために開放していた。
・ピレモンはパウロに信頼される愛情深い素晴らしいクリスチャン。→1:4-5
・ところが奴隷オネシモが主人ピレモンへの忠誠をやぶり、窃盗し逃亡した。
・オネシモは逃亡先のローマで獄中のパウロのもとに導かれ、罪を悔い改め回心した。
・パウロは回心したオネシモをピレモンのもとに返すことにした。→1:12-14
・オネシモの助かる道は、主人であるピレモンの赦ししかない。
・奴隷を赦すことは奴隷制度の根幹を覆すもので、ピレモン自身にも危険が及ぶ恐れがあった。
2:パウロの懇願、キリストの懇願
・パウロはピレモンに対し、罪を犯したオネシモを赦し受容することを強要はできなかった。→1:8-9
・10節「お願いしたい」は、「平身低頭、懇願する」こと。パウロが奴隷オネシモのために懇願する。
1:10 獄中で生んだわが子オネシモのことを、あなたにお願いしたいのです。
・キリストは、おろかな私たち罪人のために父なる神に頭をさげて懇願の祈りをささげられた。
ルカ23:34 「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」
・パウロはオネシモを愛する(1:12)思いと、罪を罪として裁かれなければならないジレンマにあった。
・パウロはオネシモの罪の責任を取る覚悟があった。→1:18-19
・ルカ23:34 父よ。彼らをお赦しください。この祈りはキリストの命がけの覚悟を伴ったもの。
・最も犠牲を被るのはピレモン。パウロはピレモンに対し、共に犠牲を負うよう懇願する。→1:20
3:キリストの愛を広げる教会
・パウロはキリストに愛を注がれた者として、キリストの愛に向かって生きる者であった。
・新約時代は教会が急成長すると共に、教会の命を守るため制度化、組織化されていった。
・しかし、制度と組織に重点が置かれると福音の恵みが後退し、霊的枯渇と律法主義に傾く。
・キリストの愛は罪ある者を回復させ、新しい命の歩みに導く。→1:11
・教会において最も重要なことは、キリストの愛が豊かに広がり、その愛によって励ましを受けること。
1:7 私はあなたの愛によって多くの喜びと慰めを得ました。それは、兄弟よ、あなたによって聖徒たちが安心を得たからです。
・キリストに愛を注がれた者として、他の人々に愛を注ぐ者として歩みたい。
・教会中にキリストの愛が豊かに広がること、それが宣教の力となる。